なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「何をしているのですか?」


 朱熹が不思議そうに尋ねると、


「後宮を騙さねばな」


 と言って笑った。


 そして曙光はほろ酔い気味の朱熹に近付くと、首筋を指でなぞった。


「少し、チクリとするぞ」


 何をするのだろうと思っていると、曙光は朱熹の首筋に唇を這わせた。


「な、何をっ!」


 驚く朱熹の肩を掴み、曙光は最後の仕掛けを残した。


 首筋に痺れるような甘い口付けを落とされ、朱熹は呆然と佇んだ。


「……また来る」


 固まっている朱熹に、曙光は優しい微笑みを投げかけ、部屋から出て行った。


(今のは、一体……)


 あの一撃で、酔いはすっかりと覚めたのだった。

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