この恋は少しずつしか進まない
Chapter 1 後輩の頼みごと



昼下がりの水曜日。私は中庭の木陰に座り、友達の美伽(みか)とお弁当を食べていた。


「ねえ、伊織(いおり)は卒業したら専門行くんだっけ?」


水沢伊織こと私は、現在高校二年生。

まだ進路を決めるには早いって思ってたけど、夏休みが明けて二学期がはじまってからはこうして卒業後のことを話すことも増えていた。


「うーん。一応そのつもり。美伽はどうするの?」

「私はやりたいこともないし、嫁にでも行こうかなって」

「……ゲホッ、ゲホッ」

美伽の言葉に思わず飲んでいたお茶が気管に入った。


「よ、嫁!?」


美伽に年上の彼氏がいることは知っている。喧嘩はしょっちゅうしてるけどなんだかんだ仲良しだし、お互いの両親にも会ったって言ってたけど……。

まさかそんな返事が返ってくるとは思わなかった。



「向こうのお母さんには早く孫を見せてね、なんて言われてるしさ。自分の人生設計では18歳で結婚して二十歳になる前にはひとり子どもを産むって昔から決めてたし」

「そ、そうなの?」


他の人だったら「ムリでしょ」なんて笑ってしまうことも、美伽なら本当に実現できそうですごい。


「伊織も嫁に行けとは言わないけど、そろそろ彼氏ぐらい作ったら?」

前の彼氏と別れて一年。実はその失恋の傷を引きずっている私のことを美伽はずっと心配してくれていた。

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