この恋は少しずつしか進まない



「っていうかお弁当……」

登校時間は間に合うけど、お弁当を作る時間がない。

……昨日、深夜2時過ぎまで寝られなかったのが原因だ。仕方ないけど今日は学食にするしか……。


「はい。どうぞ」

すると加島は私がいつも使っているお弁当箱を差し出してきた。思わず受け取ると重みがあって、手のひらには温かさも感じる。


「先輩の弁当ですよ」

「え、嘘、作ってくれたの?」

「当然です。いっぱいおかず詰めときましたから」

たしかにリビングには玉子焼きやウインナーのいい匂いが漂っていた。


「加島のは?」

「俺は昼飯野菜ジュースだから必要ないです」


つまり私のためにわざわざ早起きしてくれたんだ……。

なんとなく申し訳なさを感じたけれど、「ちなみに洗濯ものも干しときましたから」という言葉に私は部屋干し用のハンガーラックを見る。

そこには私の下着がばっちりと干されてた。

しかもAカップという小さなブラを隠しもしないで一番先頭に。


加島はたしかに出来るヤツだし気遣いもある。でも配慮というものが足りない。

私の下着は干さなくていい!とお説教しようと思ったけど、加島がうちに出入りするのは今日で終わりし、お弁当も作ってもらったからやめた。


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