亘さんは世渡り上手

亘さんと三年前



何か聞いてほしいと言わんばかりの高橋のにやけ顔に、俺は仕方なく言ってやった。



「どうしたんだ、高橋」


「おっ! 理人! よくぞ聞いてくれた! あのなあのな、皐月ちゃんとデートすることになったんだよ!」


「皐月って誰」


「俺の彼女……になる予定の子だ!」


「ふーん」



質問しておいて、至極興味がありませんと課題に戻った谷口。高橋もこれには「何で聞いたんだよ!?」とご立腹だ。


でも、そうか。あれからうまくやってるんだな、高橋。


宇佐美と顔を合わせて、こっそり笑った。


そしたら亘さんから視線を感じて、なに? と首を傾げる。



「あ、いえ……うら……なんでもないです」



……うら?


なんだよそれ。隠されると余計に気になるんだけど。


外から蝉の声が聞こえる夏。


俺達は、図書館で課題に取り組んでいた。


勉強会は週に一回。全員がキリの良いところまで進めば、ごほうびとして遊びにいける。


そういう方法を亘さんと谷口と三人で決めた。そうしたらバカ三人もやる気が続くだろうと。


現に八木には効果抜群だった。黙々と作業している。観たい映画だというところもあるだろう。



「あ! でな、理人! 花火大会に行くんだけど、皐月ちゃんが浴衣を着てきてくれるって言うからもう楽しみで」


「はいはい、それが終わったらいくらでも聞いてやるからまず手を動かせ」


「ちぇ~」



ちぇ~、じゃない。子供か。

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