亘さんは世渡り上手


ミス・ミスターコンテスト――全学年、全クラスから男女一人ずつ選び、全生徒の投票によって一番人気を決定する文化祭のイベントである。


文化祭までの十二日間、予選として学年一の男女を決め、文化祭一日目に学校一の男女を決める……というのが、文化委員の説明だった。


予選の投票は顔写真やクラスと名前、特技などが書かれた紙にある欄に丸を付けるだけだって言うし、特に難しいことはしなくていいらしい。


俺は、まぁそれだけなら受けてもいいかなと思っていた。


みんなも俺でいいって言ってくれるし。まぁ見た目の順位をはっきり決めるっていう考え方は……どうかと思うけど。



「俺はいいよ。亘さんは……どう?」


「えっ、い、和泉くんは、やるんですか……」



さっきは乗り気ではなかった亘さんに聞くと、驚いた様子で俺を見ていた。それから、先生に注意されて座らされた谷口の方を一瞥する。



「あっ、やっぱり私がやる? いいよ?」



それに気付いた谷口は得意げに胸を張る。もう文化委員ですらスルーしていた。


亘さんは数秒目をさ迷わせて……



「……わ、わたしもやります!」



思いきり俺の方を見ながら、決心したのだった。


その瞬間、クラスの雰囲気が……なんか、生ぬるい空気になった気がした。

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