菓子先輩のおいしいレシピ
 入学して二週間。私は相変わらずひとりぼっちだ。

 何度も周りの子に話しかけようとしたけれどダメで、それでも気のいい子が話の輪に入れてくれようとしたんだけれど、緊張して仏頂面で返事していたら「あの子もしかして一人でいるのが好きなのかな」と誤解されてしまったみたいだ。

 ちがう、ちがう。本当は仲良くしたいのに言えない。ありがとうって言いたいのに言えない。嬉しいって思っていても、伝えられない。ひとりぼっちなんて好きじゃない。こんな自分も全然、好きじゃない。

 一番つらいのはお昼休み。お弁当を一緒に食べる友達というのは高校生にとってものすごく大事なことで、クラスでは数日でグループが定着していた。もうできあがっているグループに入れてもらうなんて、私にとってはエベレスト登山より難しいことだった。

 とは言ってもプライドが邪魔をして、教室で一人で食べることができない。いかにも「他のクラスに友達がいますよ」という体で教室を抜け出していたけれど、どこにも行くところがなく、どこに行っても人がいる校内をうろうろしていた。

 お弁当を食べられないからいつも午後の授業はお腹がすいて大変だった。何も手をつけていないお弁当箱を持ちかえったら母に追及されるし、家に帰るまでお腹がもたないし……ということで、放課後の非常階段でお弁当を食べるようになった。

 にぎやかな昼休みと違って、放課後はまわりに誰もいないから落ち着く。

 石造りのひんやりした階段に腰をおろして、母お手製の卵焼きやハンバーグを食べていると、自分が情けなくて涙がこぼれた。


 どうしてこんなことになったんだろう。

 私の十五年の人生ってなんだったのかな。人より秀でたいとか、目立ちたいとか、そんなことは望んでない。一緒においしいごはんを食べられる友達が欲しい。それだけなのに――。


 涙をぬぐっていると、突然頭上の扉がガチャリと開いた。

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