彼がメガネを外したら…。 〜彼女の証〜


思案が尽きるどころか、自分だけでは何も生み出せない絵里花は、困った挙句ある人物を思い出した。そう、前の彼氏と別れる時も、踏ん切りをつけさせてくれたのは、大学時代からの友人の礼子だった。

大手の企業で働いている礼子は、自分を磨く絵里花とは違った意味で、アフターファイブも充実していたが、この日はすぐに連絡がついて、近くで待ち合わせることになった。


街中にあるお洒落な公園は、カップルの待ち合わせでもよく利用される場所。そこで礼子を待つことになったのはいいけれど、絵里花にとってその状況は少々酷だった。

辛いのは、師走のこの寒さではない。寒さのなかで寄り添うカップルたちの熱いこと。いろんなカップルたちの〝リア充〟ぶりを見せつけられて、絵里花の満たされない気持ちがもっとざわめいてくる。


絵里花のざわめく心とは裏腹に、公園の片隅に佇む絵里花の姿はまるで絵に描いたように綺麗で、誰の目にも止まった。整った目鼻立ちに、完璧なスタイル。緩くウエーブする栗色の髪も計算され尽くしたファッションも、絵里花の全てが、彼女を見た者の目を捕らえて離さなかった。


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