甘い恋は復讐の後で
「どこにいるんだよ。おい。外か。」

　仕事中なら素知らぬ顔をするつもりが、そんな余裕はどこにもなかった。

「別にどこでもいいじゃないですか。」

　莉緒の声はどこか冷めた声だった。

　どうしてそんなに反抗的……。
　マンションにいろってわざわざ電話までしたのに。

「あれ。珍しい。一人？」

　男の声。

　クソッ。だから嫌なんだ。

　世間知らずで箱入り娘で。
　自分が男を惹きつける雰囲気を持ってるって自覚がない。

「言えよ！どこにいるんだよ！」

「伶央？何を怒ってるんだよ。」

「……哲哉、か。」

　知っている奴の声が聞こえて安堵していると電話口で苛立つ声を掛けられた。

「ホッとしてる？
　今からいいところに行くつもりなんだけどな〜。」

「……ッ！お前！！ふざけんな。」

「早く来ないと行っちゃうよ〜。」

「お前……！！おい！おいっ！！」

　こっちは必死に呼びかけているのに電話は無情にもツーッツーッと電子音だけがしていた。

「クソッ。」

　苛立ちをぶつける先がなくて走るしかなかった。


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