甘い恋は復讐の後で
「ニャー。」

 違う方向から別の猫の鳴き声が聞こえて彼は私から見えない方向へと体を向けてしまった。

「良かったな。お迎えが来たみたいだ。
 なんだ。ミーナの子どもか。」

 母猫らしき猫が伶央さんの脚に体をすり寄せた。
 母猫の喉をかいてやってから手の中の子猫を母猫の前に置いてあげたようだ。

「もうはぐれるんじゃねーぞ。」

 背中しか見えない彼の表情は分からない。
 それなのに声だけでも分かるくらい彼は寂しげで締め付けられるように胸が苦しくなった。
 





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