甘い恋は復讐の後で
 席に戻ると先に戻っていた哲哉が女に何か言っているようだ。
 しかし女はただ下を見ている。

「どうした?」

 俺が声を掛けると顔を上げた女と目が合った。

 潤んだ瞳は熱っぽく揺らめいて、胸がざわついて息苦しさを感じた。
 そんな自分の変化に嘲笑する。

 何を……血迷って…………。

「伶央のチョークを落として踏んじゃったらしいんだ。
 見事に粉々。こんなの別に………。」

「あぁ。弁償だな。
 すげー気に入ってたヤツだ。」

 そうさ。こんな女。

「おい。伶央………。」

 口の端を上げ、俺らしく女に告げた。

「しばらくお前は俺の下僕にでもなるんだな。」

 こんな女、下僕で十分だ。

 ハハッと軽い笑いを吐く哲哉が気に入らない。

 何がおかしいんだよ。

 気に入らない反応に踵を返して「一杯、飲んでくる」と店の奥へと歩きかけた。

「伶央。携帯、忘れてるぞ。」

 指摘されてテーブルに置きっぱなしだった携帯をポケットに入れると今度こそ店の奥へ歩き出した。

 俺の後ろでは「ほら。君は下僕らしいからついて行きなよ。ここは俺が片付けとくから」と女に言っている哲哉の声が聞こえた。







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