甘い恋は復讐の後で
 マスターは俺の前にジントニックを置き、女の前にはグラスを置きながら説明をした。

「あなたにはシャーリー・テンプルです。
 有名なノンアルコールカクテルですよ。」

 綺麗な透き通る赤に氷が透けて涼しげだ。
 縁にかかるレモンが爽やかな印象を与える。

「ありがとうございます。
 綺麗ですね。
 あの……マスター?
 どうして私にはお酒を出さないんですか?」

 にこやかに微笑んだマスターが狸らしい一言を告げた。

「お酒があまりお好きではなさそうでしたので。
 ねぇ?伶央くん?」

 同意を求められ、曖昧に頷いた。

 まぁなんとなく下戸かなと思ってはいたが、俺に同意を求める辺りやっぱり狸……。

「さすがですね。
 20歳になった時に挑戦してみたんですが、どうにもダメみたいで。」

「無理して飲むことはないさ。」

 グラスを手に取り、ジントニックを喉に流し込んだ。
 さっぱりとした後にほろ苦い後味がなんとも言えない。

 なんでもないカクテルが旨いのも……なんだか癪なんだよな。








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