青夏ダイヤモンド


「私も、脩にプレゼント」

バックから巾着状に閉じられた袋を取り出して脩に差し出すと少し驚いた様子だった。

「塾のバイトのこと黙っててごめん。どうしても、脩にプレゼントを買いたかったの」

「何だ、鷹野もか」

も?と思っていると、脩が開けていいか確認してきたので頷いた。

リボンを解く瞬間、中身を覗く瞬間、一つ一つ脩がどんな表情をするのか緊張しながらも、じっと見つめていた。

「いい色だな」

あまり主張しすぎないグレーの手袋を手にした脩は綻んだ顔でそれを見つめていた。

手袋をはめ、こちらに向かって手を開いたり閉じたりする姿に可愛いと思ってしまった。


会計は自分も払うと主張したが、断固としてそれを脩が許さなかった。

「この手袋、あったかい」

外に出ると、さっきよりも人がまた増えているような気がした。

ほら、と脩が差し出した手に自分の手を乗せると握ってくれた。

「ほんとだ」

「だろ」

そのまま手を繋いで再び夜の街を並んで歩き出した。

「ねえ、鷹野もか、ってどういう意味?脩もバイトしてたってこと?」

「あー、それか。遅れた理由も話すって言ったしな」

これも裏話的なものになってしまうからか、脩がは少し言い淀んだ。

「最近ずっとバイトしてて、鷹野と会えてなかったし、疲れて朝も電車で寝てた。で、今日遅れたのは急遽休みの奴がいたから少し出たけど長引いて、連絡するのも忘れるくらい焦った」

脩には珍しく慌てた様子で駆けて来た姿を思い出して、あの時、脩の頭の中には私で満たされていたのかと思うと嬉しくなった。

「そのせいで、いろいろ不安にさせてたみたいだけど、余裕無い感じ出したくなくて、黙ってた」

「お互い、見栄っ張りだね」

「かもな」

おかしな行き違いは種明かしをすればなんてことはない、お互いがいい格好をしたいがために秘めた事。

だけど、相手の事を思った末に起きたすれ違いこそ厄介なのかもしれない。



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