死神の恋
学校に到着すると自分のクラスに向かう。私が在籍している二年三組の教室があるのは南棟の三階。息を切らして階段を上がる。
エスカレーターがあったら楽なのにと、くだらないことを考えながら階段を上がり切れば、そこには仁王立ちしている真美の姿があった。
体の前で両腕を組み、眉をつり上げている真美から漂ってくるのは不機嫌オーラ。私を待ち伏せしていたのは明らかだ。
「未来! どうして朝練に来なかったの?」
真美が私のもとにツカツカと詰め寄ってくる。
今朝、私は『待ってるからね』という真美の言葉に『うん』となずいた。それなのに昨日に引き続き、今日も朝練習をサボった。
「……ごめん」
約束を守らなかったことを真美に謝る。しかし真美は納得してくれなかった。
「謝ってほしいんじゃなくて、私は朝練に来なかった理由を聞きたいの!」
「……」
あと五分もすれば朝のホームルームが始まる。真美の声は、教室に急ぐ生徒も思わず足を止めてしまうほど大きい。
悪目立ちしたくないのに……。
黙り込んでしまったのは、カナちゃんの一件がトラウマになっているから。「ケンカ?」と、私たちの様子を遠巻きにして見る同級生の視線が痛い。
もう嫌だ……。
真美に責め立てられることも、同級生にジロジロと見られることもいたたまれなくなった私がうつむくと、ホームルームの始まりを知らせるチャイムが鳴り響いた。