きっと夢で終わらない
「仮にも先生と生徒。でも上に報告したところで私に何のメリットもないから黙ってたけど。国語ゼミに出入りしてたみたいだし、仲いいんだね。でも今日で終わりか。あ、でも外で会うか。どっちにしろ自分のシェルターは持ってるわけだ。いい身分だね」


何も言い返せなかった。
どすり、どすりと銛が胸に刺さる感覚。
息をするのが精一杯。
あの日のことが蘇って来て、何も言えなくなってしまった。

美紀の瞳にはなんとも言えない黒い色が滲んでいて、さらに追い討ちをかけてきた。


「『特別は作らない』って断言してたくせに」


美紀の声は震えていて、顔には悲痛の色が現れていた。

カシャン、と天秤が壊れる音がした。
私の精神の均衡が壊れた音。
美紀はそれだけ言うと、私の横を通り過ぎ去った。
私は呆然と立ち尽くしていた。

約二年経っても、美紀の心は私によって酷く傷つけられたまま。
どれだけ傷が癒えたように思えても、きっとふとした時には思い出して苦しくなる思い出に違いはない。
そうならないように、当たり障りのない人間関係を築いていたと思ったのに。

バカだ。
結局私は同じことをしてしまった。
自分以外の周りが見えていなかった。


——「特別は、作らないに越したことはない」
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