きっと夢で終わらない
「……は?」


あまりの突拍子のなさに、眉根が寄る。


「あの時『風邪引かなかった?』っては聞いたけど、結局謝ってなかったな、と思って」


何を言われるのか身構えたのに、拍子抜けした。
空気のような声が出て、あっけにとられた私の顔は鯉のようだったのだろう。
弘海先輩は私の方を一瞥して「そういう魚いる」と、笑った。
笑い事じゃない。


「謝ったっけ?」

「……」


正直謝られたかも、どうかも怪しい。そもそもそんな些細なことまで覚えていない。
だってもう、三年も経つのだ。
とりあえず答えもせずに黙っておいた。
もう関わる気はないと言う意思を示したつもり。

それでも弘海先輩は御構い無しに「あの時はいきなり水かけてごめん」と謝ってきた。
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