ベストフレンド~本当の友達~

駅でみんなと別れ、家路に着く。

すっかり桜も散り、緑の葉が生い茂っている。

風は穏やかで、気温は暖かい。

そんな、全てのことが愛おしく感じた。

これも、みんなのおかげだ。




夕食の時間。

「あら、腕時計。新しいわね」

叔母さんが突然言った。

「友達に、誕生日プレゼントでもらいました」

「そう」

叔母さんはそれだけ言って、食事に戻る。

そして、再び顔を上げ。

「後で、誕生日プレゼントのお小遣いあげるわ。友達と遊ぶのにでも使いなさい」

「え……」

急に言われ、驚いてしまう。

機嫌が良いのだろうか。

叔母さんは約束通り、5000円くれた。

私はしっかりと、お礼を言った。

大切に使おうと思った。




ゴールデンウィーク最終日の朝。

友里からメッセージアプリに連絡が入った。

勉強を教えて欲しいそうだ。

もうすぐ中間テスト。

私は一応時間を見つけて勉強してあるが、友里はしていないのだろうか。

友里は勉強場所に図書館を指定したので、着替えと朝食を終えた後、向かった。

貰った腕時計も忘れずにつけていく。


この町の図書館は、それほど大きくなく蔵書も少なめだが、利用者は多い。

いつも勉強しに来る学生や、家族連れ、新聞を読みに来るおじさんなど様々な人がいる。

叔母さんも時々、利用するそうだ。

私は入り口近くのベンチで、で友里を待つ。

集合時間の5分前に友里は来た。

「おはよう、桜」

「おはよう、友里」

「腕時計、つけてくれてるんだ。嬉しいな」

「うん、もちろんだよ」

私たちは図書館に入る。

今はまだ暑くないので、エアコンはつけていないようだ。

その代わり、窓が開いており風が時折入ってくる。

私たちは机のある勉強コーナーヘ向かう。

机は4つある内の3つは使われていた。

空いている机に勉強道具を広げ、勉強を始める。

「それで、どの教科教えてほしいの?」

「全部」

「え?」

「全部」

「まさか、何もテスト勉強してないの?」

「うん」

友里はあっけらかんと言った。

これは困った。

「友里、もしかして勉強苦手?」

「うん、大の苦手でして」

その後の勉強会は、難航した。

友里は普段の授業を真面目に聞いていると思っていたけれど、案外そうでもなく、先生に冗談を言うことに全精力を注いでいるようだ。

私は友里が理解していないことを一つ一つ丁寧に解説し、理解するまで付き合った。

2時間ほど勉強した。

「いやー、こんなに勉強したの初めてかも」

友里は伸びをしながら言った。

どうやって高校入試を合格したのだろうか。

「そろそろお腹空いたし、コンビニ行こうよ」

友里の提案で、私たちはコンビニへ向かった。



図書館の近くにコンビニがある。

歩いて10分程度で着く。

私たちはおにぎりとサンドイッチ、それにお茶を買い、図書館に戻る。

図書館内は飲食禁止なので、近くのベンチで食べる。

こうして2人きりで外で食べていると、公園で遊んだ日を思い出す。

「やっぱり、外で食べるとおいしいね」

友里がしみじみと言う。

「うん」

「午後はどうしよっか?」

「え? 勉強するんじゃないの?」

「え、遊ぶつもりだったんだけど。あんなに勉強したじゃん」

友里の中で、2時間はかなり勉強した方らしい。

友里は大学受験、大丈夫だろうか。

まあ、まだ2年生になったばかりだけど。

「さ、食べ終わったし、勉強しよう」

「えー、遊ぼうよー」

「だめ。テストで赤点取ったらどうするの?」

「う……わかったよ」

友里は渋々といった様子で、私と一緒に図書館内に戻った。




「そういえば、もうすぐ修学旅行だね」

勉強の最中、友里が急に言い出した。

「うん、楽しみだね」

私たちは修学旅行で、沖縄へ行く。

沖縄は行ったことがないので、楽しみだ。

「佳織も2年生だったら、一緒に行けたのにね。何で1年遅れて生まれてくるかね」

友里のその言葉に、苦笑いする。

「友里は沖縄行ったことあるの?」

「ないよ。だからすごく楽しみ」

「うん、私も」

友里や美羽と一緒なら、きっと楽しめるだろう。




勉強を終え、図書館を出る。

「それじゃあね、桜。今日はありがとう」

「うん」

友里の学力は、今日の朝の時点より大幅にアップしていると思う。

これなら、赤点をとることはないだろう。

赤点を取ったら、一緒に遊ぶ時間が減ってしまう。

それは、避けたい。



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