恋の残り香 香織Side
それからも毎日健司は病院にやって来た。

香澄は病院であった事や愚痴等を健司に話した。

健司は口数が少なかったが、香澄の話をいつも聞いてくれた。


「健司さんは無口な人なんですね」


香澄がそう言うと、健司は困ったように笑った。

その笑顔の意味に香澄は気付かなかった。


「あの、健司さん?
同じ年なんだから敬語とかやめませんか?
もう私達友達ですよね?
友達なら敬語はおかしいでしょ?」


健司と話をするようになってしばらく経った頃、香澄はそう提案した。


「はい…」


健司はポソっと返事をしたが、俯いていて表情は伺えなかった。

< 6 / 32 >

この作品をシェア

pagetop