夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

格闘経験の無い者でも察せられる程に大袈裟に放った殺気。
それに、素朴そうに見えながらも、彼女は勘も頭も良い。
この警告を理解出来ない筈はなかった。


アカリ様はヴァロン様と愛し合い、僅かな月日でも幸せな家庭をご一緒に築いて下さった方。
私とて、出来れば手を掛けたくはない。

シャルマ様に気付かれていない今ならば、まだ引き返す事が出来る。

”お願いします、退いて下さい”
そうアカリさんに視線で訴えていると、マオ様が慌てた様子で声をかけてきた。


「あ、あのね!ディアス!
ほらっ、彼女が前に話した黒猫を預かってくれてる人なんだ!っ……だから、今日はそのお礼に……」

マオ様は私の殺気や本心には気付いていない。
慌てているのは、シャルマ様より私がマオ様と接する人間には注意するよう命を受けているのをご存知だからだ。

マオ様のその様子から、アカリ様の事をまだ何一つ思い出していないのだと安堵しながらも、長居する事はそれだけ大きなキッカケを与えてしまう可能性がある。
私は早々にマオ様を連れ帰る事を優先した。
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