夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

「そりゃ、そうだよ……ね」

絵本は所詮絵本。作者や読者の夢を描いた空想でしかない。
それに、今の自分に月姫様が現れて、微笑んでくれる筈などないだろう。


そう、分かっていながらも……。
心の何処かで、逢える気がしてた。
長い黒髪を風に揺らしながら、優しい笑顔を浮かべて、僕の名前を呼んでくれる気がしてた。

アカリさんーー。

誰よりも真っ先に浮かんだのは、彼女の姿。
初めて彼女を見かけた瞬間から思ってた。月姫様が本当にこの世にいるのならば、こんな感じの女性なんだろうって。

初めは近付くのが怖い気もした。
けど、知れば知るほど……。見た目だけじゃなくて、話し方も雰囲気も、自分の思い描いていた月姫様にそっくりで……目が離せなくなった。傍に、居たいって思った。
彼女が微笑ってくれたら、僕の胸も暖かくなって……。彼女が悲しんだら、僕の胸もズキズキ痛んだ。

どうか、ずっと微笑っていてーー?

いつの間にか、そう強く想うようになっていた。
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