夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

ついつい”自分の将来の主”という事を忘れて、じっと凝視してしまう。


……すると。
その人は本に向けていた視線を上げて、ゆっくりと私を見た。


ーーッ!

目が合った瞬間、ドキンッと胸が弾む。

黒縁の眼鏡の奥の、眠そうにも見えるトロンッとしたその瞳は、まるで灰色の水晶。

シャルマ様と同じ黒に近い灰色の瞳の筈なのに、リオン様の瞳は不思議な輝きを放っているように見えた。


何なんだ?この人は……?
本当に、最初から変わった方だった。


『……息子?』

リオン様はポツリと尋ねるように呟いて、その場から立ち上がると、真っ直ぐに正面から私を見つめてくる。

一方の私は「ご挨拶しなくては!」と頭では解っているのに、”今までに見た事もない人”との出会いに行動が出来なくて……。
ただただ、瞬きもせずに見つめていた。

そんな私を見たまま、リオン様が言った。
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