夢の言葉と約束の翼(中)【夢の言葉続編⑥】

アカリ様を思い出すと、自然と笑みが溢れる。
紫の薔薇を一輪取りその花びらにそっと口付けると、ゆっくりと車を走らせていた運転手が口を開いた。


「ご機嫌でございますね。じいは嬉しゅうございます」

そう優しい声を響かせるこいつは、母親が嫁いでくる時にその実家から一緒にやってきた執事のジュゼ。母の亡き後からずっと私の世話役となり、側にいてくれた。

バックミラー越しに目が合うと、ジュゼは顔をくしゃっとして微笑う。
だいぶ白髪の増えた茶髪、顔の肉は少し垂れ、シワも増えてきた。
年齢的にもそろそろ引退させてやりたいと思いながらも、幼い頃から側に居てくれたジュゼ以上に安心出来る世話役なと当然おらず。仕事量は少しずつ減らしているが、今も手放す事が出来ない存在。


「お前には、必ず見せてやる。オレの最高の姿をな」

私が自分を”オレ”と、言える数少ない存在。
私がフッと微笑むと、ジュゼは「はいっ」と嬉しそうに頷いた。
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