妖精の涙【完】

精魂祭3日目



精魂祭3日目、最終日。

ティエナの軟禁生活は終わりを告げようとしていた。

まだ歩きづらさがあるものの人並みに歩けるようになり、返してもらった服に袖を通しブーツを履いたが問題は無かった。

お世話をしてくれた看護婦からは涙目でお別れを言われたものの、やはりアゼルは現れず少しがっかりした。


「見ねえうちに痩せたな」

「それはお互い様でしょう」


迎えに来たギーヴを見ると懐かしさを感じいつもの調子で接した。

彼もまた忙しかったのか目の下に隈がうっすらと見えていた。


「閉祭式の前にさっさと帰るぞ。道が混む」

「そうですね」


オルドに会う気は毛頭なかった。

会ったところで彼の邪魔になるだけだ。


「なんか変なことされてねえよな?」

「変なこと?」

「…まあ、大丈夫そうだな」


歯切れの悪い言い方をされて少しもやっとしたが忘れることにした。


「それじゃ、観光するか」

「え!」


やった、観光!

ずっと窓越しだったから実際に見れるとなると嬉しさが湧き出てきた。


「あ…これ、預かってもらってもいいですか」


ギーヴに渡したのはあの小説だった。


「うわ…なんでこんな懐かしいもん持ってんだよ」

「読んだことあるんですか?」

「ああ!10のときにな」


…みんなして同じ頃に読んでいたのか。


「貰い物です。退屈しないようにと」


実際には昨夜に渡されたためほとんど読めていないが。


「さあ、行きましょう外へ!」


誰にもらったか聞かれる前にグイグイと彼の大きな背中を押した。


「わかったからそんなに押すな」


笑いを含んだその声を聞きつつ、名残惜しそうにドアを閉める前に部屋の中を見つめていると、ふとあることを思いついた。


「ギーヴさん。あのしおり、今持っていますか?」




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