妖精の涙【完】

選択






今思えば。


私はこのために生かされていたんだと思う。


もしイエローコリンを育てていなければ…


体内で生成されるエネルギー量に耐えきれず死んでしまったかもしれない。


もし侍女になっていなければ…


オルド様に会うこともなかった。


みんなに会うこともなかった。


紅葉を見ることもなかった。


自分のための買い物に行くこともなかった。


あの小説を読むこともなかった。


プレゼントをあげることもなかった。


いろんなことを知ることもなかった。


もし生まれていなかったら…


こんなことにはならなかった。


でも、私にしか止めることができないと思った。


私の両親がどんな想いでいたのかはわからないけど、2人は引き裂かれると知ったときは悲しかっただろう。


お腹に私を残したまま死んでいった母は何を思っただろう。


そんな母を見届けた父は何を思っただろう。


たくさんの奇跡が重なり、今の私がいる。


この先起こる誰かの奇跡のために。


私もこの身を捧げよう。




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