冷たい指切り  ~窓越しの思い~

5月

遠足も無事に終わり、中間考査期間が訪れる。

教師の俺は……連日のテスト作りに寝不足で、欠伸を噛み殺してばかりだ。

「和くん、涙が滲んでるよ!
テスト出来た?
生徒達からしたら、悩ましいもん作って!って言われそうだけど
作る教師の大変さも、分かって欲しいよなぁ~
偏らず、難しすぎず………
結構、悩んで作ってるのになぁ。」とぼやく樹に

「全くなぁ~
上からは、こき使われて……下の尻拭いして………
まぁ、でもやっぱり……生徒よりは良いかなぁ~。
試験受けて、評価されて……将来に悩むくらいなら………
仕事してる方がいいよ。」

俺の意見に

「確かに!」と納得する。

学生の楽しさは、確かにある。

ただ、大変さも……………やっぱりある。

大人になるとズルさも覚えて、中々純粋に生きれないよ。

試験期間の今、職員室に入ることの出来ない生徒達は

ドアのところで教師を呼んでもらう。

「石井先生~」

今日、何度目かの呼び出しだ。

「和くん、頑張って!」

樹のちゃかしをムシするも………面倒くささは隠せない。

ムスッとして、席を立つと

「スマイル、スマイル!」と、ニヤケた顔をこちらに向ける。

正直、テスト作り以上に面倒なのが……この呼び出し。

いつもは、さりげなく逃げて数学準備室に行くのだが……

テスト前の質問と証して、職員室で呼ばれては……ムシ出来ない。

本当に質問する子は、ホンの一握りで…………

大半の生徒が、俺に近づくための質問だ。

はぁ~っ。

ため息を吐いて、近づくと………

そこにいたのは、伊藤千尋だった。
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