Acum ~アクラム〜
捜索編

入団

ここは、とある田舎町。セミが鳴く時期にもなり、もうすぐ7月を迎えようとしていた。
「じゃあ、行ってくるから、留守番よろしく」
「あぁ」
1、入団

俺は今家に居る。今日は平日で学校があるのだが、行く気にもなれん。というかここ最近学校には行っていない。俺は今、高校生1年生。新生活が始まって楽しい時期だと思うが、俺は違った。なぜかって?俺にはこの不思議な力が宿っていたから。その不思議な力とは、相手の感情が分かる力。それに気づいたのは、中学3年の終わりの頃。最初のうちはよく分からなかったが、どうやら相手の目を見ると、その人の感情が分かるらしい。例えば、黄色なら楽しい。白は何も思ってない。赤は怒り。紫なら不愉快。こんな感じた。まぁこの不思議な力のせいで学校ではういてしまった。どーせ学校に行っても、紫色のオーラしか見えないだろう。感情が分かるのはそんないいもんじゃない。
「ん?」
そんな時、インターホンが鳴った。
俺は玄関に向かいドアを開けた。
「誰っすか?」
そこには俺の知らない顔の奴がいた。知ってる顔少ないから当然か。
「わたし、みよって言います」
みよ と少女は名乗った。
髪の毛は銀髪で肩まで伸びており、背は俺より小さめ。目は青色。
「なんか用っすか?」
「はい!とりあえず、わたしと一緒に来てください」
は?
「いや、なんで?」
そして、みよと名乗っ少女は少し考え。
「きっと、あなたと一緒のような能力の人がいると思うからです」
俺はそれを聞いて少し疑った。そして、感情を見た。
「この色は…自信?」
思わず声が出てしまった。
「へぇ〜、ほんとに感情見れるんだ〜」
!?
俺が何したかのか分かったのか?
「嘘じゃないんだしついてきてよ」
嘘の感情は…見れない。
「ちょっと待ってろ」
とりあえず俺は、このみよとか言う少女についてくことにした。



「なぁ」
俺がみよにそう言うと、不機嫌な顔をしてこちらを見てきた。
「なんですか?」
「い…いやその、いつ目的地に到着すのかなぁって思って」
正直、結構歩いたと思う。それに外はくそ暑く、家でクーラーガンガン効かせてた俺にはキツすぎる。
「そうですね、あとちょっとです」
「そうか」

30分後……

「なぁ」
また不機嫌そうな顔してこっちを見た。デジャブだろこれ。
「なんですか?」
「いや、さっきあとちょっとって言ってたのに、全然つかないじゃないっすか」
「なるほど、意識しないと感情は読み取れないんですね」
「は!?お前嘘ついてたのか!」
「はい」
真顔で言うと腹立つな!
「じゃあ次は、本当のことを教えてくれ」
「あの山の中です」
この色は、真実。真実!?
「まじで!?あの山の中!?」
「聞かなくてもあなたならわかるでしょ」
分かるけど、なんか逆に自分を信じたくない!
「つべこべ言わずさっさと行きますよ」
「はぁ〜…」
晩飯までに帰れるかな?親父になんて言い訳しよう……

あれから1時間くらい経って、ようやく目的地とやらに付いた。
「なんでこんなところに小屋があるんだよ」
そこには、木でできた古い小屋があった。
「ここはわたし達の秘密基地みたいなところです」
「秘密基地?」
「まぁとりあえず中に入って下さい」
なんだろう?すげぇ怪しい匂いがプンプンするだけど…
俺は小屋のドアを開け、中に入った。
「おっ、帰ってきたか、み……誰だおめぇー!?」
いやこっちが聞きてぇよ紫頭、大体来いって言われたの俺だよ?
「この男が現時点で、5人目の能力者です」
みおが後から小屋に入ってくる。
「なっ!ついに新たな仲間がもう1人増えんのか!?」
紫頭が俺に視線を向けてガン見してくる。
「で、彼の能力は?」
奥の方で座っていた黒髪メガネが、紫頭と対象的に落ち着いた感じでみおに質問をする。
「はい。彼の能力は<感情透視(ゲフュール・アイズ)>です」
ゲフ…何だって?
「ゲフュールはドイツ語で感情。アイズって目のことっすか?だとすると、感情が見えるとか」
今度は赤髪の女が古びた二段ベットの下の段で、寝ながら俺の能力を簡単に当てた。
「感情が見えるのかよ、、すげぇな」
なんなんだよこいつら、てか何者なんだ・・。
「ではみなさん、おのおの彼に自己紹介して下さい」
そこでみよが、謎の3人組に話しかける。
「んじゃあ俺からな」
紫頭がその場で立ち上がり、自己紹介を始めた。
「俺の名は、也波 翔(やなみ しょう)。能力は<接触操作(コンタクト・アペランゼン)>、ってもわかんねぇか、えっと〜……なんだ、俺が触ったもんは自由に動かせるって感じだ」
也波は、自己紹介が終わると、もといた場所へ戻って言った。
「次は私ですね」
今度は黒髪メガネの男が立ち上がった。
「私は、清水 和俊(しみず かずとし)です。能力は、色々な物を創り出せるという<原子生成(アトム・フォートマ)>です。慣れるまで大変だと思いますが、お互いに頑張っていきましょう!」
なんか、律儀な人だなぁ。まぁおそらく、迷ったらこの人に聞けば良さそうだな。
「次はあたしかぁ、あー名前は‘‘サイクロン’’」
「おい、ちゃんと名乗れよ」
清水さんの注意を受けて、赤髪の女は言い直した。
「名前は アネス・ユクテルシア。まぁ、みんなからは サイクロン って言われてまーす。能力、能力ではないなあたしは、とりあえず身体に神宿してまーす。<風神>宿してるんでサイクロンってあだ名なんすよぉ」
「神を宿す…」
なんだ、神を宿してるって、厨二病かよ。いや、実際そうなのだからここに居るのか。もう厨二病でも何でもないただの神じゃん!
「あっ、ちなみに、このメガネはみんなから、特にあたしから、‘‘アトム’’って言われてるんっすよ」
「なっ・・!!い、今はそれ関係ないだろ!」
清水さんの反応からして事実なんだなぁ。
「では最後にわたしですね。わたしは、冬月 妃世(ふゆつき みよ)です。能力は、<索敵感知(コブラダ・シード)。まぁ、索敵スキルみたいなもです。よろしくお願いします……」
突然妃世が沈黙してしまった。
「そー言えば、あなたの名前って、何ですか?」
あっ…確かに俺は名乗ってないような気がした。
「えっと〜…俺の名前は、か、暈樹 哲平(かさき てっぺい)です。…まぁ、よ、よろしくお願いします」
やっべぇ〜、自己紹介とかあんました事ねぇから、何言ったらいいのかわかんねぇ…
「では、自己紹介も終わったところなので、我々の活動の説明に移りましょう。とりあえず、そこらへんに座ってて下さい」
俺は妃世の指示に従い、近くにあった椅子に座った。そして妃世が俺の前に立ち説明を始めた。
「まず我々は ‘‘スラプ団’’というもの作りました。スラプとは、Search(捜索)Rescue(救助)Prevention(防止)の3つ英語の頭文字の組み合わせです。能力者を探し、その能力で困っていれば助ける、もしくは、能力を悪用していればやめさせる。まぁ、大体はこんな感じです。なにか質問はありますか?」
って言われてもなぁ…そもそも自分がここに居ること自体が謎だしなぁ、てかその事聞けばいいのか。
「あっじゃぁ、なんで俺がここにいるの?」
「あなたの能力が必要だからです」
「…えっ?」
俺は一瞬言葉を失った。
「あなたのその、感情を見る能力があれば、相手を説得しやすくなります。そのため、私達の所に来てもらいました」
「俺が…必要…なのか…」
誰かが俺を必要としてるなんて思ってもいなかった。
「はい。あなたの力が必要です。協力、してくれますか?」
「あぁ、勿論だ」
その時、何故だか俺は嬉しかった。心の底から。
「ありがとうございます。他に何かありますか?」
俺は少し考えて、ふっと思ったことを質問した。
「なんで、能力者に能力使わせさせるのをやめさせるんだ?」
その質問をした途端、周りの空気が一気に重くなった。
「能力を使うと記憶がなくなっていくからです」
記憶が、なくなる?
「能力を使うたび、記憶は無くなります。現に私にはもう5歳より前の記憶が残っていません」
「5歳より前の記憶なんて、誰だって無いだろ」
「誰だって無いからこそ怖いんっすよ」
そこで、アネスさんが話に割って入ってくる。
「暈樹の年齢は知らないっすけど、あたしらはみんな15っす。いくら10年前だからって、記憶の1つや2つは覚えてるはずっす。それに、そんな副作用があるとは知らずに能力使いまくったら、自分が何者なのかもわからなくなっていくっす」
確かに。記憶なんてすぐに忘れてしまうから、そんな副作用があるなんて気づくはずが無い。それに、今俺は、もうすでに思い出せない時期がある。全くと言っていいほど思い出せない。
「質問は他にないですか?」
「あ、あぁ」
「では、今日は解散しましょう。また後日、会いましょう」
こうして俺は、スラプ団に入ることになった。てか、またあの長い道通んなきゃなんねぇのかよ。

「お疲れ様でした」
「お、おつかれ様、妃世。って妃世んは帰らないのか?」
「はい。わたしには記憶がないので」
「ん?どーゆう事だ?」
「つまり、家の場所が分からないのです」
「えっ、記憶って徐々に徐々になくなっていくんじゃないのか?」
「はい、わたしもそう思ったのですが、少し違ったみたいですね」
いや、そんな当たり前のように言われても、ただ事じゃねぇぞそれ…
「じゃあ、うちに来いよ」
「いえ、あなたのご家族にご迷惑をかけることなんてできませんし」
「別に俺ん家には親父しかいねぇし、秘密基地っつても、床は地面じゃないか」
それに今は夏だ、夜だって蒸し暑くて正直しんどいぞ。
「ですが…」
「行ってみてはどうですか?」
そこで清水さんが、意見を言った。
「正直、私もそのことに関しては少し気にはなっていました。そろそろ基地暮らしより、誰かの家に住ませてもらった方が、健康的に良いと思いますよ」
そして妃世はしばらく考えて。
「そうですね。確かに住ませてもらった方が良いかもしれませんね。では、遠慮なくお邪魔させてもらいますね」
この時の俺はまだ、年頃の女の子を家に泊めるという、聞いただけで少しやばそうな事に気付いてはいなかった。


2へ続く
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