夢の世界で会いましょう
脳細胞を活性化させて潜り抜けた午前中の授業の先には、待ちに待った昼食時間が訪れる。

11時頃から既に腹の虫が鳴り続けていた優奈にとって、至福の時間だった。

「そう言えば優奈はまだあの変な夢見てるの?」

優奈の友人の1人、真理子は思い出したかのように話を振った。
ポニーテールの似合う彼女は運動部のエースで、細身の筋肉質で、モデルのように美しい。
学園内のアイドル敵存在である。

「まだ見てるよ…もう7日目よ」

「まじか!もしかして…まだホームレスなの?」

「ホームレスよ、ホームレス。金無し、家無し、職無しよ…。夢だからいいけど、凄く切ないよ…」

溜息を漏らす優奈の反応に申し訳なさそうに、有紗が小さく笑う。
小柄で童顔の為、幼い印象を受けるが、そこがまた可愛いと、男女問わず熱い支持を受けている。

「でもさ…中々見ないよね。そこまで…悲惨な夢っ、逆に笑える」

「夢なんだからさ、適当に仕事就いて、金稼いだらいいじゃん?勇者とかなってさ、冒険したらいいのに」

有紗と真理子が言う通り、たかが夢の話である。
そこまで深刻に考える事では無いだろう。

けれど優奈の本能が告げるのだ。

本当にただの夢なのか、と

実は魂だけパラレルワールドに飛ばされて、という展開だったら、恐らく自分は死んだら終わり

その仮定が否定されない限り、冒険をしようと優奈は思えなかった。

「どうせならイケメンの勇者様が表れて、私を救って欲しいよ」

どうせ見るのであれば白馬に乗った美白、高身長、イケメンの聡明な男性が1人位出てこないだろうか

優奈はお茶を飲みながら、ポツリと本音を漏らす。

「寝る前に見たい夢に関する物を見てから寝るといいらしいよ」

「枕の下に置くと見るんじゃなかったっけ?私も今日帰ったら、アイドルのカケルの写真、入れとこうかな」

その後、彼女らの会話は今流行りのアイドル、音楽へと変わり、夢の話はそこで途切れた。

★★★

寝る前に好きな物を枕の近くに起き、お気に入りのにゃん太を抱きしめながら、優奈は今日も眠る。

夢の続きに進展があるか、果たして今日から違う夢を見るのだろうか。

不安と期待を胸に、優奈は瞼を閉じた。


ふと目を開けるとそこは夢の世界だった。

今自分は寝ているのか、と認識をした優奈は辺りを見渡した。

今日は昨日と異なり、何やら騒がしい。

街には旗やカラフルな装飾が付けられております、まるでお祭り騒ぎのようだった。

「すいません…今日は何かあるんですか?」

優奈は飾り付けをしているお店のおばちゃんに声をかけてみた。

「あんた知らないの?今日は街に勇者様が来るんだよ!こんな街にも来てくれるなんて…、めでたい日さ!!」

勇者

その言葉を聞き、優奈は思った。
これが写真の効果なのではないかと。

「1度でいいから勇者様を見たかったんだ…、噂ではかなりの良い男らしいからね」

おばちゃんはルンルンと鼻歌を歌いながら、店の飾り付けに精を出していた。

(勇者かぁ…枕元に置いた写真の人だといいな…)

優奈が枕元の近くに置いた物の1つに、とあるゲームのカードを置いていた。

名前位は誰もが聞いた事がある世界的にも人気のRPGであり、優奈の大好きなゲームの1つだ。
もし一緒に旅ができるのであれば、彼と旅がしたい、そう願って枕元に忍ばせていた。

(よし!今日は目が覚めるまでに勇者様を探すぞ!
ゲームの王道的にはまずあそこを覗くべきだよね、多分!)

優奈はおばちゃんの店から離れ、街の中心へと向かっていく。

場所は集会所

ファンタジーの世界では定番の、仲間を求めて旅人が募る所である。
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