姉の婚約者
「ふーん。で何か用事があったから商店まで来たんじゃないのか?」

「ああ、姉さん……加奈のお使いですよ。」

「へえ。お使い……ここか!」

 そういうと伊沢さん(乱暴な方)はコンビニの中に入った。私が見ていると自動ドアの中から顔をのぞかせて

「来ないのか?」

 と言った。
え?一緒に買い物するつもりなの?どんだけグイグイくるんだ。私がiTunesカードを探していると伊沢さんが話しかけてきた。

「なあなあ、それなんだ?」

「何ってiTunesカードですよ。」

「あい……?」

 マジか、こいつ。不思議そうに首をひねっている。

「これでクレカ登録しなくてもiTunesで音楽買えるんですよ。」

「あい……くれ……?」

 いや、クレカは分かれよ。クレジットカード持ったことなくても存在はわかるだろうが。

「もう、いいっすか?」

 さすがにうざったくなってきて、急に突き放した。伊沢さんも伊沢さんでもうiTunesカードには興味を失ったらしく店内をキョロキョロしだした。私は2000円のiTunesカードを手に取ると伊沢さんのほうを振り返った。

「まさか、コンビニも初めてですか?」

 ちょっとしたからかいのつもりだった。ちょっと恐怖がマヒしていたのかもしれない。そんな私の心などお構いなしに伊沢さんはあっさり肯定した。

「おう、初めて。いつも買い物はすぐるがしてるからな。」

「?」

 誰だ。すぐるって。伊沢さんはデザートコーナーをもの珍し気に眺めて、一つのカップを手に取って私に差し出した。

「おい!これ買ってくれ!このカッコいい色の奴!」

「なんで私が。」

「金?もってないんだよ。持たせてくれないんだ」

 なんでそんな無邪気な顔ができるんだよ。なんだよ、小銭ももってない大人って。さすがに腹が立って伊沢さんの顔を見上げると伊沢さんの頭に巻いてある包帯に目が留まった。それに私は何も言えずブルーベリーヨーグルトを受け取った。
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