姉の婚約者
さて、あれからどうなったのか?
片耳にイヤホン突っ込んでラジオを聞いていたため姉の話はよく聞いてなかったが、どうも噂の彼にお会いする運びとなりました。


 ということで私達は夜中、とっくに終電もねぇのに駅前のカラオケで時間を潰している。
警備員のバイトが5時には終わるというので、姉いわく待つそうな。
現在、AM1:28
ふざけないでいただきたいものである。
姉とカラオケ行っても、別に歌う曲はない。さっきから涙も忘れてノリノリで歌う姉を眺めている。



ムカつくので、イヤホン突っ込んで仮眠を取ることにする。いつもなら帰宅するところだが、先程どうも私は姉の彼氏に会うことを快諾したという、…ホントに?
 とりあえず、寝る前にリモコンでアイ・オブ・ザタイガーを死ぬほど入れといてやろう。



眠れたかといえばイエス、休息できたかと言えばノーという状態で目を覚ました。AM4:50
まだ暗い空の下、私達は待ち合わせ場所に向かう。
そういえば、姉と一晩を外で過ごしたのは初めて

 待ち合わせ場所では、やたらとガタイのいい東南アジア系とみられる人物とヒョロっとした日本人男性の二人が談笑しているだけだった。コイツラではないよな…
あまりにも、吸血鬼のイメージ似合わなすぎる。

私達が歩いて歩いているのが見えたのか、ヒョロが声をかけてきた。


「かなちゃん、こんばんは」

あ、その方々だったんですね、すみません。
二人?

「こんはんは、いざわさん。急にごめんね」

姉が答える。どうも日本人の方が彼氏らしい。よかった、危うく吸血鬼に信憑性が出る所だった。

「構わないよ、そちらが妹さん?」

「妹のゆり子です。よろしく」

「お姉さんとお付き合いをさせて頂いている伊沢すぐるです。こんな時間にごめんね。」

意外。もっとヤバイ人が出てくるかと思いきや、普通の人だ。ちょっと根暗よりの人だけど優しそう。うーん、勝手なイメージだけどガンダムとか好きそうだな、なんとなく、めっちゃガンプラ持ってそう。

「あの、こちらは…?」
 
姉が横の東南アジア人の方を示す。姉も初対面なのね。なぜ、連れてきたんだ……
聞かれると東南アジア人はにっこり笑って話し始めた。

「コンニチワ、ワタシインドネシアカラキタ、ルディデトイイマス。ヨロシクヨー」

「あ…、はじめまして。妹のタニムラ ユリコです。どうぞ、よろしくお願いいたします。」

「ユリコネー、ドゾヨロシク、ニホンゴアンマリウマクナイケドユルシテネ」

あら、いい人。顔もなかなかどうして悪くない。
私がルディさんしか見ていないからか、伊沢さんが言う。

「バイト同じなんですよ。老人ホームの深夜警備員やってるんです。彼は近くの大学の留学生で生活費を稼ぐためにバイトしているそうです。」

学生か、不法労働感半端ないけど…

「大学院生ですよ?国費で留学している……って本人が言ってました。」

なんでお前も半信半疑なんだ。
そんな話をしていると、ルディさんが唐突に

「オナカスイタネー、炒飯タベタイネー」

と言い出した。まあ、立ち話もなんですので?、という話にもなり、ルディさんおすすめの24時間営業の中華料理屋に行くことにした。
何、その業態?
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