春雷
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授業中に見知らぬ番号の着信。

伝言メッセージを聞いたら、警察だった。

先生に話したら、タクシーを手配してくれた。

体の震えがとまらなかった。
寒いせいじゃない。
(どうしよう‥どうしよう‥)

パパにも連絡したけれど、
電話に出ない。
警察の人もそう言っていた。

涙が知らず知らずにあふれてくる。

異常な気配にタクシーの運転手さんも
心配してくれた。

病院に着く頃は、大雨で、私は走って中に入った。

早く!早く!
エレベーターが遅いよっ!

(お願い!無事でいて!琴葉さんっっ)


指定された病室にやっとたどり着いた。


「琴葉さんっっっ」

勢いよくドアを開けると

座っている男性の背中が見えた。

(パパ?いや、違う‥!!)



その人は、ゆっくりと、振り返って、私を見た。
(あ、あの人は、まさか)


高村先生だった。

私を、ぼんやりと見つめている。
目に力がなくて、何の表情もない。
ネットで見る高村先生とあまりに違う。

私は先生の普通じゃない気配に気圧された。


「ああ‥。娘さんですね‥。こちらへどうぞ‥」

ごく静かに呟いて、
ゆらりと音もなく立ち上がり、
椅子を開けてくれた。

先生が横にずれると、
額や腕に包帯を巻いている琴葉さんが見えた。

「こっ、ことはさん‥っっっ!」

駆け寄ってみると、
背後から
「少し眠っています‥」
と、声が聞こえた。
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