春雷
「あ、そうそう、琴葉さん、スマホ充電してる?」

「え?うん、多分。どうして?」

そう、私に尋ねながら、
由乃ちゃんがムートンのブーツを履きつつ、
自分のスマホを出して何か操作し始めた。

「高村先生が、琴葉さんが何回かけても電話にでない、何か事件に巻き込まれてない?て、私にメール来たよ」

「エッ?ヘッ⁈‥はアッッッ?!」

(な、な、な、なんてこっタアァァァ!!!)

「ほら。めちゃくちゃ心配してる。無視してたんでしょー」

由乃ちゃんが私に見せたスクリーンには、間違いなく、高村先生からのメールだった。

あまりに信じられない事態に
寒いのに変な汗がじわりと背中に滲んだ。

「あ、なんでアドレス知ってるかって?この前のライブの時に交換したの。それより、スマホ見てみなよ」

(さっきの私の誓いは一体‥)

こっちが隠しても、もはや彼が予想の斜め上の事をする??

(さっき!ついさっき!ユノには疑われたくないって思ってたとこなのに!!!完全にワケありじゃない!!!)

取り繕う言葉も見つからず、
言われるがまま、カバンからスマホを取り出した。

「うわっ!怖っ!着信入りまくりじゃん!」

由乃ちゃんがスマホを除きこむ。

私は、なんとなく、高村先生から連絡がある気がして、逆に連絡を待つ自分が嫌で、ずっと確認していなかった。
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