春雷

「私、私だって、
あなたが好きです」

「えっ、ホントにっ?」

「私はずるいからあなたのせいにしてるけど、最低ですね‥
夫がいるのにあなたが好きだなんて‥」

「僕、二番目でもいいんですよ」

「ぶっ殺しますよ」

「‥すみません」

「自分が情けないです。
ほんとに、これからどうしたらいいんですか‥
中学生じゃあるまいし、簡単にお付き合いってわけにはいきませんよ」

「タイミングです。何ごとも、来たる日が来たら、その時は僕はチャンスを逃しませんよ」

タイミング‥て、そんな時、あるのだろうか。

「ああ、
そういえば、今日はクリスマスですね‥
クリスマスを柴田先生と過ごせたのに、
不甲斐ない‥ゴホゴホ」

「もう、休んで下さい。休めないなら退散しますから‥」

「フランス、僕は本気ですよ」

「‥娘も、一緒に?」

「もちろんです。約束したでしょ?サインボールとれたら、行くって」

「!なんで取れたの知ってるんですか?!」

現地では取れなかったけれど、
たしかにフライングゲットできた。

「由乃さんが教えてくれました。さあ、貴女も、本気で考えてくださいね‥フランス」

「‥別れるのは、簡単ではないと思います‥」

「まあ、クリスマスにそんな事を考えるのはやめましょう。
だけど、僕と、由乃さんと生きていく道も、捨てないでくださいね‥」

彼は疲れたのだろう。
ウトウトとし始めた。


メリークリスマス‥貴女には‥僕を捧げます‥


彼はそう呟いて、目を閉じた。

一途な思いをそこまで私に貫いてくれるのかと
思うと、一筋涙が、頬を伝った。


< 85 / 110 >

この作品をシェア

pagetop