42歳 主婦 旦那様に片思い中【佳作受賞】
「お母さん、これ買って。」

欲しいけど…

「ムリ。」

娘にはそう言ったが、

「でも、かわいい〜」

私は売り物のティッシュケースを抱きしめる。

そこでふと思い出した。

結婚前、私がどうしてたか。

私はティッシュケースを抱きしめたまま振り返って、上目遣いで純ちゃんを見た。

「お父さん♡」

語尾にハートマークのついた甘い声で呼んでみる。

純ちゃんは無反応。

「お父さん♡」

もう一度呼ぶと、純ちゃんは照れたように笑った。

かわいい!

客観的に見たら、いい年したおっさんが笑ったところで、かわいいわけはないんだけど、でも!私にはかわいく見えるんだから仕方ない。
< 34 / 92 >

この作品をシェア

pagetop