42歳 主婦 旦那様に片思い中【佳作受賞】

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不妊治療を始めた頃から、咲笑は少しずつ変わっていった。

俺を求めるというより、子宝を、種を求めるようになった。

それだけ精神的に追い詰められていたんだろう。

俺は咲笑が毎月泣いているのを知っていたから、咲笑の苦しみが少しでも軽くなるなら何でもよかった。


出産後、咲笑は母になった。

女として俺に抱かれるのは、あまり気が進まないようだった。

我慢して抱かれても、体は正直だ。

俺は、男である事を諦めた。

俺たちは、恋人から、夫婦になり、父と母になったんだ。

寂しい思いはもちろんあったが、咲笑が幸せなら、それでいい。

咲笑が昔のように明るく笑ってくれていれば、それだけで幸せだった。

もともと咲笑は、俺には手の届かない高嶺の花だったんだから。