42歳 主婦 旦那様に片思い中【佳作受賞】
1年後、彼は言った。

「そんなにお金をかけてまで、子供って必要?
2人だけで生きていくのはダメなのかな?」

だから、私は言った。

「もし、今、ここに子供がいたとして、誘拐
されて身代金500万円を要求されたら、
どうする?
たかが500万なのに、勿体ないから、
払わない?」

「それは、払うよ。当たり前だろ。」

「じゃあ、まだ見ぬ我が子の命のために500万
くらい使っても、命の値段だとは思えない?」

それから、彼は、何も言わなくなった。

治療にも積極的に参加し、顕微受精になっても、金銭面の事は何も言わず、採卵日には半休を取って病院に来てくれた。


私は2年半治療を続け、29歳でようやく妊娠する事ができ、30歳で長女を出産した。


私は、幸せの絶頂にいた。



今も、決して不幸せなわけじゃない。

優しい夫がいて、かわいい娘がいて、円満な家庭がある。

ママ友がいて、パートで気楽に働いて、気晴らしもできる。

だけど、寂しい。

あなたにとって、私はいつから女じゃなくなったの?

こんなにあなたに恋い焦がれたのは、初めてかもしれない…


< 9 / 92 >

この作品をシェア

pagetop