極上恋慕~エリート専務はケダモノでした

 それは、1時間ほど前のこと。

 クリスマスイブだというのに、万佑の彼――大地(だいち)は出張で、今日のデートは数日前から先送りが決まっていた。
 お互い社会人だと、そういうこともあるだろうと理解した彼女は、上司から譲り受けた本日限定のディナー招待券を使おうと、大手町にある高級ホテルに向かったのだった。

 宿泊するにはちょっと手を出しにくい高級ホテルは、どこを見てもカップルばかり。
 だからといって、気後れして質素に過ごすつもりもなく、万佑は堂々とおひとり様のディナータイムを満喫すると決めていた。

 3階の高さまで吹き抜けているロビーは、いかにも高級ホテルを思わせる。
 螺旋階段の近くにグランドピアノが置かれ、艶やかな白御影石の床とシャンデリアは豪勢で、特別な場所を輝かせていた。
 余裕のある生活をしている人が宿泊をするのだろうと、万佑はフロントでチェックインをする恋人たちを横目に、レストランのある上階へ、エレベーターで向かおうとした。

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