はつ恋の君をさがしてる
想いでと思い
「見つけた。」

ザーザー降りの雨の中

あいつは空を見上げたまま座り込んでいた。


親父にクライアントだと紹介され、その後にさらに俺の嫁候補だとまで言われて、正直なところ関わりたくないと思ったが、とりあえずと抱き上げてレストランのエントランスまで運んだときに、あまりの軽さと小ささにびっくりした。

親父に俺とは10歳しか違わない大人だと言われても信じられなかった。

おまけに筋金入りの病院嫌いらしい。

親父も何度かそれで逃げられて困らされたから気を付けろと言われた。

でも……まさか…。

病院に足を踏み入れただけで涙目になるし

注射器見ただけで過呼吸起こして気絶するなんて考えもしなかった。

本当に焦った。

さらに点滴抜いた途端に走って逃げるとは……。


マジかよ!

呆気にとられている間に彼女は行方不明。

やっと見つけたと思えばびしょ濡れだし

なんなんだ?

とにかく何とかしないと!

俺は彼女を抱き上げて病院よりも近い俺のマンションに急いだ。

柔らかい彼女の頬や額が俺の胸にぴとっと押し当てられる感触につい頬が緩む。

不意に彼女から力が抜けた気がして、顔をのぞき込んでみる。

あ!
また気絶か?
それとも眠ったのか?

俺は心配で焦りながらマンションへの道を走った。
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