雨夜の星に、願いひとつ
わたしより少し年下だろうか。
奥二重の瞳が涼しげな顔立ちと、無造作にセットした短い髪。おしゃれな半そでのTシャツから、ほどよく筋肉のついた腕が出ている。

――あ、かっこいい。

そんな言葉がとっさに浮かんで、あわてて頭から消した。
初対面の人に対して真っ先にそんなこと思うなんて、男好きのバカ女みたいだ。


「柴ちゃん、ちょうどよかった。紹介するわね。こちら、新しく入ってもらう相沢さん」

「はじめまして、相沢夢希です。よろしくお願いします」


パイプ椅子から立ち上がったわたしは、30度の角度で頭を下げた。
前に受付のバイトをしたことがあるから、お辞儀にはちょっとだけ自信がある。行儀がよくて素敵なお嬢さんね、とカレのお母さんも以前褒めてくれたっけ。

男性は鮮やかなブルーのイヤホンを両耳からはずし、まっすぐにこちらを見て深いお辞儀を返してくれた。


「柴崎 良太(しばさき りょうた)です。よろしくお願いします」


少し低音の、独特のリズムがある声。
はずしたイヤホンから微かに音楽が漏れ聴こえてくる。わたしの好きなアーティストの曲だ。
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