雨夜の星に、願いひとつ
彼を見送り玄関のドアを閉めると、わたしは「さて」とつぶやいてキッチンに戻った。


「準備できた? そろそろ行こうか」

「はーい」


今年5歳になる娘の希望(のぞみ)が、肩から斜めにかけたバッグにハンカチやティッシュをつめている。身支度を自分でやりたがるようになったのは、ここ最近のことだ。


「のんちゃん、雨が降りそうだから傘も持っていこうね」


大好きな黄色いクマのキャラクターの傘を見せると、娘は「うん!」と元気よく返事して目を輝かせた。


   * * *


幼稚園の玄関前は、いつものように園児や保護者たちの姿でにぎわっている。

仲良しのお友達の姿を見つけた娘は、あっさりとわたしの手を離して走っていった。入園当初は「ママと離れたくない」と毎朝ぐずっていたのが嘘みたい。


「のんちゃんのお母さん、おはようございまーす」


声をかけられて振り向くと、娘の担任教諭だった。


「おはようございます、先生」

「夕涼み会のおしらせのプリント、もう見てもらいました?」

「あ、はい」

「お時間があればぜひ来てくださいね。のんちゃん、お歌の練習がんばってますから。
あ、それから、これ」


そう言って先生がA4の封筒から何かを取り出した。
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