伝説に散った龍Ⅰ




少しズレたアイシャドウから見るにしても、きっと。



普段からはしてなくて、
慣れていない化粧で粧すほどに。



柚のことが、それほどに、
純粋に、好き。



大きな黒い瞳から、その恋心が滲み出ているようで、なんだかそれが可笑しくて、



少し声が出てしまいそうになったのを慌てて堪えた。



柚は、嫌っている、ようだったけど
私には、いい子に見えたなぁ。



なんて、
…初対面の子を認めちゃう、だなんて。



柄にもない。



「ふふっ」
小さく、笑い声が漏れる。



「っ、誰だ!?」
柚の、焦った声が聞こえた。



「私だよ…柚」



ゆっくり、地面をゆっくりと、確実に踏みしめるように、歩く。



もし、ね。



…もし、この子が、柚の女嫌いの元凶だったんだとしたら。



だと、したら。



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