俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。



放課後、みんなが文化祭の準備に取りかかるなか。俺だけが帰宅。
他のクラスも準備で大忙しだし、飛鳥もクラスの準備のあとはバンドの練習で大忙し。
飛鳥は文化祭でバンドのライブもやるから、そのチケット販売もしてるしな。

……ま、かなり盛況らしいけど。


そんな活気溢れる学校から出てスマホを確認すれば、咲空から連絡が来ていて、俺も急いで駅に向かった。


今日の咲良の服の金は俺が管理。
だから俺がいなきゃ咲空はなにも買えないしな。



歩くこと10分、無事駅につくとまだ咲良の姿は見えなくて、ここらへんにいる、と写真を送ればすぐに咲空も到着した。


「よーし、行こ!」


咲空と二人で出掛ける、なんて滅多にないけど…
ま、たまには兄妹の時間を過ごすのもありかな…

仲はいい方だと思うし…


まぁ、明らかに咲空は兄貴の方が好きだけど。
それでも、俺のことが嫌いなわけではないから、普通に仲良く楽しく買い物ができた気がする。




そして無事、咲空の買い物も終わり、俺らはファミレスで飯を食って帰ることにした。


「はぁ。満足満足。」


咲空も服が買えて満足みたいだし。
俺も、また服買っちゃったし。


「ってかさぁ、咲空って女子校じゃん?
彼氏とかってどうやってできたわけ?」

「あー、なんか前に飛鳥の路上ライブに行ったときに知り合ったんだよね。
相手は高1なんだけど、すっごい飛鳥のファンみたいで。
まぁそれで仲良くなって…かな。

ただ飛鳥の妹だとは言えてないけどね」


はは、と苦笑いする妹。

…そうだよな。
相手の憧れの人と家族だなんて、俺も絶対いえない

そのあとが怖くて。
……それが目的で近づかれたなんて、絶対に嫌だから…


だから、母さんのファンも父さんのファンも、兄貴のファンもいるけど、絶対に口外はできない。

飛鳥のファンだけでも面倒なのに……


「ってかさぁ、飛鳥って今渋谷で有名じゃん?
碧翔は双子だから間違えられたりしないの?」

「かなり間違えられる。だから髪型を毎回まったく違うのにしてもらうのに、それでも間違えられる。
どうしたらいいんだか…」

「まぁ双子だから仕方ないよね」

「そんな似てねぇのに」

「そりゃ毎日見てればそうおもうけどさ」


……だよなぁ…
俺、なんて生きにくい人間なんだ……

こうやって咲空といるときが、いちばん楽かもなぁ…



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