俺の好きな人は、俺の兄貴が好き。



___夕方、帰宅


「ただいまー」

「あ、碧翔おかえりー」

「……兄貴、今日帰んの早くね?」

「仕事で使う服を買いに行くんだけど
母さんも行くって言うから一旦帰ってきて母さん待ち。」

「母さんは仕事?」

「そ。でも打ち合わせだけだからって、向こうの仕事部屋にいるけど。」

「…ってか兄貴がモデルやんの、反対してるくせに服は一緒に買いに行くのかよ」

「はは、確かに。
まぁ自分の買い物もあるんじゃん?」

「ふーん」


俺の兄貴、松野朝陽は3年前に渋谷で声をかけられて以来、ずっとモデルの仕事をしている。

……そう、俺の好きな涼すけが好きなASAHIはこいつのことで……


長男ってだけあって昔から大人っぽいというか落ち着きがあって、弟の俺も認めるくらい優しくて、

……ついでに、超がつくほどのイケメンで。


俺より10センチも背は高いし、足も長いし、顔もいいと来ればそりゃモデルやるよなと、誰もが納得する。

……それに比べて、俺なんか……


なんて虚しくなっていると「よろしくお願いしますー」という声と共に、ザワザワと騒がしくなり、静かに鳴ったかとおもえば

「あ、碧翔おかえりー」

リビングに母さん登場。


「…ただいま。
兄貴と出掛けるんだって?」

「あぁ、うん!すぐ支度するから待ってて!」

「……俺も行こっかなぁ」

「えー、ダメだよ。
今から渋谷にいくんだよ?一緒にいるとこ友達に見られたらばれちゃうんだから、やめときなさい。
また遠くにいくときは一緒に行こうね」


・・・また、これ。
いつからだろう。母さんや父さん、朝陽までもが俺と飛鳥と出掛けなくなった。

まぁ、海外とかだと普通に一緒に行くんだけど……


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