暴走族の天使〜紡ぐ言葉を聴きたくて〜
恋と波乱
詩side

北星との抗争から早くも1週間が過ぎた

あの日、星竜と北星の両方に怪我人が

多数いて私は敵味方関係なく

怪我の処置に奔走していた

北星の皆さんはとんでもないと

慌ててたけど抗争は終わったんだから

そのままにしておきたくなくて

北斗と島田さんに直談判したの!

北斗は溜め息をついて

島田さんは苦笑いしてたけど

私のものすっごい勢いに根負けして

折れてくれました〜!

というか、怪我してる人が目の前にいるのに

ほっとける人なんているの?

私にはそんな事出来ないんだもん!

凛くんや幸くん、他の下っ端くん達と

星竜も北星も関係なく処置して回ったの

それからなんとか処置が終わって

北星の皆さんが

倉庫から帰る時、島田さんから

存続を許してくれた事と

怪我の処置をしてくれた事への

感謝をいつか返させて欲しいとの

申し出があった

何かあったら星竜に力を貸すという

ものらしいんだけど

困ってる人が居れば手を貸すし

怪我してる人が居れば処置するのは

当たり前のことなのに

すっごく律儀な暴走族さんだなぁって

尊敬しちゃった!

あくまで私達は敵同士だけど

危機的状況の時は動いてくれるんだって!

じゃあ仲間になればいいのにって思ったけど

それは少し難しいみたい…

暴走族って色んなルールがあるだなぁって

思った

そして、今日もいつもと同じように

下っ端のみんなと1階の溜まり場で

遊んでいた私に北斗から

呼び出しがかかりました

「詩、話があるから総長室に来い」

突然の呼び出しに首を傾げながら

私は総長室に向かった

ーコンコン

「入れ」

ドアを開けるとベットに腰掛けた

北斗が居て、なんだか真剣な表情…

なんだろうなぁ?

こんな表情を浮かべる北斗は

初めてかもしれない

こっちまで緊張しちゃうような

少しピリッとした雰囲気に

ちょびっとビビりながら近付くと

いつもの定位置、北斗の膝の上に

乗せられた私をジッと見つめる北斗は

息を呑むほど綺麗…

ゴクリと喉を鳴らす私に聞こえたのは

とっても甘い言葉だった

「詩、俺は初めてあの路地裏で
会った時から、お前が好きだ。
自分のことより周りが優先で
俺を暴走族の総長としてでなく
流川北斗として接してくれた
初めての女だった。
守りたいと思ったのも
傍にいて欲しいと思ったのも
詩が初めてだ。
お前を誰にも渡したくない。
ずっと傍にいてくんねぇか?
俺の…彼女として」

北斗の真っ直ぐな瞳と想いに

私の心臓はドキドキして

身体中の血液が沸騰しそうで

最早パニックです!!

でも…私がこんなにドキドキするのも

安心するのも北斗が初めてだから

これが恋愛感情の好きなのかが

分からないの

優しい眼差しも、大きくて温かい手も

腕の中に居る時の安心感も

抱き締められてドキドキするのも

北斗が私にとって特別な存在だから?

これが好きってことなの?

この気持ちが本当に恋愛感情の好きなのかが

分からないと返事出来ない

今すぐに答えを出さないとダメなのかな?

私はポケットからメモ帳とペンを出して

今の想いを綴って見せた

≪好きって言ってくれて嬉しい。
だけど、私の心にある北斗への想いが
恋愛での好きなのかが分からない。
今までにこういう気持ちになった事が
ないから…
だから、少しだけ返事待ってくれる?≫

メモ帳から目を離した北斗は

いつもと変わらない優しい眼差しで

「待ってる」

って言ってくれたから

私は笑顔で頷いた

次の日、恋愛感情の好きが何なのかを

ずっと考えてみたんだけど

さっぱり分からない…

どうやったら答えが出るの?

ウンウン唸る私を心配して

声を掛けてくれたのは、律だ

「詩、朝からずっと様子が変よ?
何かあったなら話聞くけど」

あ!適任者が目の前にいるじゃない!

外見も中身もパーフェクトで

知識も豊富な律が〜!!

ノートを取り出して質問してみる

≪恋愛感情での好きってどんなの?≫

「え?恋愛感情での好き?
…もしかしてだけど、詩
恋した事ないの?
というか…そんな質問するって事は
誰かに告白でもされたの?」

え?恋?

それってどんな感情のこというの?

っていうか、たったひとつの質問で

誰かに告白された事まで分かるなんて

律って何者!?

≪正直言うとね、恋とか愛とかって
私には分からないの。
愛された記憶がないし、それに…
今までは生きてくだけで精一杯だったから。
それに、喋れない事で周りの人達には
私避けられてたから、もちろんお友達も
居なかったかの≫

文字を追う律の顔がすごく悲しそう…

こんな顔させることになるなら

書かなきゃ良かったかもしれない

ど、どうしよう…

自然と膝の上で固く握り締めた手の爪が

肌に食い込む

その時、フワッと柔らかいものに包まれた

「過去にそういう経験をしたら
きっと私だって詩と同じように
思ったかもしれないわ。
だけど、それは過去の詩であって
今の詩は私も含めて沢山の人達に
愛されてる。
だから、そこは自信を持っていいと思うの。
恋とか好きが何なのか分からないなら
私からいくつか質問するから答えて?」

抱擁を解いた律は優しい眼差しで

私の頭を撫でてくれた

過去は過去、今は今か…

過去のことは決して消えないし

なかった事にはならないけど

今が満たされていれば

いつか本当に過去を過去として

受け止められるかもしれないね

簡単じゃないかもしれないけど

一歩ずつ前進してみようかな…

優しく見つめてくれる律に笑顔で頷いた

「じゃあ、過去は一旦今は置いておいて
質問するわね?」

首を縦に振って頷いた

「まず、その人が詩以外の女の子に
同じように触れたら嫌?」

北斗が私にしてくれる事を他の人に?

う〜ん…嫌かもしれない

コクッと頷いた

「じゃあ次の質問ね?
その人が詩だけに見せる仕草や態度を
他の女の子に取ってたら嫌?」

私だけに見せる仕草や態度…

膝の上に乗せてくれたり

大きくて温かい手で頭を撫でてくれたり

優しい眼差しで笑いかけてくれたり

それを他の人にも?

少し…

ううん、すごく嫌かもしれない…

コクッと頷いた

「じゃあ最後の質問ね?
その人と一緒に居てドキドキしたり
離れないで欲しいって思う?」

うん、すっごくドキドキする!

離れたくないって思う!

コクコクと頷いた

クスクス笑う律に私の頭の中は

ハテナが沢山浮かんでる

首を傾げてジッと見つめていると

律は優しいソプラノの声で言った

「それは間違いなく恋よ、詩。
人に恋をして好きになると
その人を独占したいっていう気持ちが
芽生えるの。
自分にだけ触れて欲しいとか
自分だけに優しくして欲しいとか
傍にいて欲しいとか…
離れたくないし、離して欲しくないとか。
人を好きになる基準なんてそれぞれだけど
良いところも悪いところも
全部ひっくるめて一緒に居たいって思うのが
恋で、好きって事だと思う」

独占したい…

全部ひっくるめて一緒に居たい…

それが恋…

じゃあ私は北斗の事が好きってこと?

恋愛感情として…

≪でもみんなの事も好きだよ?
それも恋愛感情としての好きなの?≫

私の疑問に律はゆっくり首を振る

「じゃあ、みんなとの好きと
その人との好きの違いを教えてあげるわ。
例えば…キスして欲しいとかしたいって
思うのは?
今、誰の顔が浮かんだ?
その人が詩にとっての好きな人よ」

キ、キキキキス〜!?

恥ずかしい〜!!!

恥ずかしくて俯く私の頭の中に

浮かんだのは…北斗だ

他のみんなで想像してみても

どこかしっくりこない気がする

抗争の前日に北斗からおでこに

キスされた時はドキドキして…

恥ずかしかったけど嫌じゃなかったと思う

ってことは、やっぱり私は

北斗が好きなんだ

分かってしまったら

途端に心臓がドキドキバクバクして

胸がぎゅっとする

茹でだこ状態であろう顔を上げて

律を見つめると律は優しく笑った

「答えが出たみたいね、詩」

その言葉に私は笑顔で頷いた










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