今が思い出にならないために。

彼のいる日々

気温も上がり日差しも強くなり、北国にも暑い夏が来た。
本州の猛暑を経験したことがないせいか、30度位だとかなり辛い。海の爽やかな香りがする風があるのと、夜には涼しくなるのが救いだ。

私は変わらず研究を続ける毎日が続いた。
しかし、ひとつ変わったのは、津久見くんがいることだ。

私がいつも休憩する時間に海辺の廃墟の近くで、会うのが日課になりつつある。

今日は実験で反応し終えるのが長くかかるため、コンビニのアイスコーヒーとロールケーキを買い、彼の居る場所へと向かった。

「お疲れー。」

珍しくキャップを被り、ラフな服装をした彼が待っていた。

『あ、これ。ケーキとアイスコーヒー。』

「…なんか待ち時間長い実験してる、ってことですね」

察しが良すぎる…と思っていると、彼はこっちきて。と廃墟より先にある雑草の伸びきった草むらを抜けた。

『うわ…こんなところあったんだ!』

海辺はコンクリートが高く積まれ、後ろは草むらの空き地になっている場所が現れた。

「ここいいでしょ。座れるし!湾の向こうのほうまで見えて綺麗だし!」

どや顔の彼がいつのまにやら開封したロールケーキをぱくりと頬張った。

私は何となく、彼が急に現れたことへの蟠りが解けていないことを自覚していた。
しかし、湾の見える方向に座る彼の幸せそうな横顔を見て少しだけ、こうして会えただけでも良かったのかな。と思えた。
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