花と雫
*一輪目

「眠たい…」

教室に着くなり、冬華は机の上に突っ伏した。
ふと横を向けば、窓の外に綺麗な桜が咲いているのが見えた。

空を見上げれば晴天、小学校の理科的に言うならば雲量0で快晴だろう。
4月の上旬の生暖かい風と心地の良い空気。

まさに花見日和である。

そこまで考えたところで冬華はふと思ってしまった。

なぜ、今日来なければならなかったのだろうかと。
学生なのだから学校に来るのは当たり前のなのだが、世の中の諸君わかるだろう。

「帰りたい」
この一言に尽きる。

何なら今日のコンディションは最悪である。
ほぼほぼ徹夜状態で新作の乙女ゲームを全クリした今、自分を支えているのは胸キュンパワーである。

体力ゲージは瀕死状態、ドラクエの毒状態で歩いているのと同じように歩くだけで体力消費が半端ない。

つまり、何が言いたいかというと、そろそろ限界だということだ。
さっさと帰って昨日集めたスチルを眺めたいし、とりあえずは寝たい。

こんなにも生理的欲求が満たされていないというのにどうして学校サイドは登校を命じるのだろうかと理不尽に思いながら冬華はため息をこぼした。

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