ちゃんと伝えられたら
私にとってきつい一言を坂口さんは言う。

「…いつもその言葉を言われると、その人とのお付き合いは終わりだったんです。」

私はぎゅっと目をつぶる。

「いくらお前ばかり気にしている俺でも、お前が何を考えているか分からない時だってある。」

静かに坂口さんが話し始めた。

「でもそこで志保が俺に伝える事を諦めてしまっては前に進めないと思わないか?俺はそういうお前が歯がゆい。」

坂口さんは左手を伸ばし、助手席の私の頭をなでる。

「やっと仕事面ではそれが改善されてきたと思っていたのに…、また元に戻ってしまうのか、俺達の関係はこんなものなのか?」

車が会社の駐車場に止まった。

「今夜は空けておけ。ゆっくり食事をしに行こう。これは命令だ。逆らったら…。」

坂口さんはシートベルトを外すと、私にキスをした。

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