幼なじみの榛名くんは甘えたがり。



背後に気配を感じたので、食器を受け取ろうと振り返った。


だけど、勢いよく振り返ってしまい、距離感を全く測っていなかったので、思った以上に榛名くんが近くにいた。


「っ!!」


バカみたいに、一瞬で動揺した。


あわてるわたしの様子を首を傾げて不思議そうに見ていた。


「ごちそーさま」



動揺したわたしとは正反対に榛名くんは、平然とした態度で食器を渡して、わたしから離れた。


自然体でいることができない。



変なの……。
これが普通なのに。

わたしは、何を意識しているんだろう。



榛名くんはわたしに言ったんだから。
『雛乃が僕を求めてくるまで何もしない』と。


わたしから榛名くんを求めるなんて、ありえないはずだと自分に言い聞かせているのに。


これでいいはずなのに。


……なんだか、胸の奥がざわついた。

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