君と出会えた物語。



「おい!大丈夫か?」



急に腕を掴まれた。



でも、聞き覚えのある声に振り返る。



息を切らして腕を掴む達也くん。



その後ろには裕太も居る。



「なんで…2人がいるの…。」



ヒロがいない事にこんなに安心感を覚えたのは初めて。



「ロビーで偶然達也に会って、話し込んでたら朱莉が飛び出して行くの見えたから2人で追いかけたんだよ。」



そうだったんだ…。



全然気づかなかった。



「なんで泣いてるんだ?」



達也くんはいつもの無愛想な顔をしてるけど心配してくれるのが伝わってくる。



2人は私を間に挟んで座って聞いてくれた。



ボソボソとゆっくり話した。



たまに言葉が詰まったりしても何も言わずに私が話すのを聞いてくれた。



2人に話してると気持ちも落ち着いてくる。



「浅野って同じクラスの奈々の事だよな?」



「…うん。」



話し終えると裕太が口を開く。



「奈々か…。」



達也くんも浅野さんのことを奈々と呼ぶ。



なぜか2人とも浅野さんと親しい感じ。



「浅野さんとヒロってどういう関係なの?」



「奈々とヒロは…。」



そう言いかけた裕太を達也くんは止める。



「それは俺らが勝手に言ったらダメだろ。」



もやもやする。



「お願い。達也くん教えてほしい。」



少し考え込んで話すことを決意してくれた。



「本当はヒロの口から言うべきなんだろうけど…。」



そう言うと一息置いてから私のことを見た。



「ヒロと奈々は昔付き合ってたんだよ。」



「え…。」



「小さい頃から家が隣同士だったってこともあってすごく仲が良かって中学1年の時に2人は付き合い始めて…でも、2年の夏にヒロの親が離婚して色々思い詰めてたみたいで女遊びが激しくなっちゃって奈々とヒロは別れたんだ…。」



遠くを見ながら話す達也くんの横顔はすごく苦しそうだった。



話さなくなってしまった達也くんの代わりに裕太が口を開く。



「母親の不倫が原因で離婚してあいつの中で何かが変わってしまったんだ。俺たちはそんなヒロを見ていることしか出来なかった。でも、高校決まって一人暮らしを始めたヒロは少しずつ元通りになった…はずなのに。」



いつも元気な裕太。



けど、今は違う。



落ち着いた声で、でもどこか寂しげで。



「班が決まった時。正直、心配してた。けど、朱莉とヒロは大丈夫だろうって…。ヒロは奈々に対して罪悪感があるって前言ってたしなんか話せない事情があったのかもな。」



「そっか…。」



私もこんな事になるなんて思わなかった。



最近たまに合宿のことで帰れない日とか一緒に学校行けなかったりしたけど...。



付き合ってから揉めたことだってない。



いつもあの無邪気な笑顔で話しかけてくれてたのに…。


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