君と出会えた物語。
第2章*⑅



気がつくと食堂に着いていた。



「下田さんは何食べる?」



「あ、私お弁当だから大丈夫。」



「そか。おばちゃんBランチちょうだい。」



たくさんの学生で溢れているこの空間に1人で来る勇気がなくて食堂に来るのは入学して初めてだった。



ずっと来てみたかった。



憧れの場所にきょろきょろしてしまうけど、柳田くんとはぐれないように必死に後をついていった。



「おい!ヒロ遅すぎな。」



「ごめんごめん。」



派手なグループがすでに座っているテーブルの前に着くと柳田くんは親しそうに話し出した。



「ヒロその子誰っ?」



ひょこっと覗く女の子にドキッとした。



「あぁこいつは下田さん。今日から一緒に食べるから。」



「え?今日から?」



「そう今日から!」



そう私に言うと柳田くんは金髪の男の子と茶髪のいつも柳田くんといる同じクラスの男の子の間に座った。



取り残された私はどうしたらいいのか分からなくて立ち尽くすしかない。



怖いしなによりさっきみたいに受け入れてもらえなかったらって...



「下田さんかぁ!何組?」



「え、あの...。」



茶髪の肩にかかるぐらいの髪を巻いた女の子が話しかけてくれたけど、緊張して上手く話せない。



「江美、そいつ同じクラスだから。」



柳田くんの言葉に江美と呼ばれる女の子が驚くより私の方が驚いた。



「ご、ごめんなさい。私...同じクラスって知らなかった。」



「ううん。全然気にしなくていいよ!今日初めて学校きたから知らなくて当然。下田さんこっち座りなよ?」



案内された席は女の子2人の間。



き、緊張する…。



「改めまして向井江美(むかい えみ)です。江美って呼んでね!」



「私は結海、渡結海(わたり ゆうみ)。よろしくね!」



「朱莉です...仲良くしてもらえたら嬉しいです。」



2人とも気さくに話しかけてくれていい人たちなんだろうなって思うとすごく安心した。



「朱莉ね!よろしく!てか、なんで敬語なの?江美たちタメだから普通でいいよ。」



「うん。ありがとう...。」



笑ったはずなのに、なぜか涙が流れる。



悲しいとかじゃなくて...すごく、すごく嬉しい。



「あ、おい。なに泣かしてんだよ。」



柳田くんが泣いている私に気づいて声を荒あげた。



「ヒロ...どうしよ。泣かしちゃった。」



「違うの...嬉しくて。本当に嬉しくて。」



泣きたいわけじゃないのに涙が止まらなくて…



困らせてしまってるのは分かったけど1度流れてしまったから自分ではどうにもできない。



優しくされればされるほど、涙が溢れてきてしまう。



江美と結海がティッシュくれたり、頭撫でてくれたり落ち着くまで心配してくれた。



「大丈夫?落ち着いた?」



江美が心配そうに首を傾げて聞いてくれる。



本当に優しいなぁ。



「うん!もう大丈夫。驚かしてごめんね。」



「下田さんよかったね!」



「うん。連れて来てくれて本当にありがとう。」



ニッと笑う柳田くんに釣られて笑った。



「俺たちのこと忘れてない?俺が裕太、橋本裕太(はしもと ゆうた)でこっちの無愛想なのが安藤達也(あんどう たつや)だよ。朱莉ちゃん、俺たちとも仲良くしてね!」



「裕太と達也くんお世話になります。」



「なんで俺だけ呼び捨て?いやいいんだけど…達也に″くん″がついてるのが気にくわん!」



「なんでだろ…分かんない。」



みんなが一斉に笑いだす。



この空間好きかもしれない。



柳田くんの友達は少し派手だけどみんな優しくてすぐ仲良くなれた。



柳田くんには感謝してもしきれないな。


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