危険なあなたともう一度…
やっぱり男なんてみんな女なら誰だっていいんだよね。梓さんなんて女を選び放題だろうしきっと困ってないんだろうな。

家に着きお母さんに頼まれた物を渡しすぐに部屋へと駆け上がりベッドにダイブする。

その途端に押し殺していた涙が溢れ出す。
なんで梓さんを思ってこんなにも涙が出てくるんだろう。

もし、好きなんて感情に気付いていなければ泣くこともなかったはずなのに…。

どうして好きになってはいけない人を好きになってしまったのだろうか。今すぐ忘れられるならばとっくに忘れてるのに…。

もしかしたらあの時の梓さんの言葉すべてが偽りだったのかもしれないなんて最低な考えが出て来てどうしようもなく醜い…。

それでもどうしても…

「…っ…会いたい…」

梓さんはきっといまあの女性達と一緒にいて私がもう見れない笑顔を向けてるに違いないんだ…

辛くて苦しくて梓さんを思うと会いたくて声を聞きたくてあの時みたいに優しく触れてくれることはもうない。

私の恋はもう終わってしまった…

あれから2日後ある事件がきっかけで桐生組の恐ろしさを改めて知ることになった。

その日真希と一弥くんと学食でお昼を食べているとある話を耳にした。

"ね、聞いた?"

"あの桐生組が中部地方の組と殺り合って勝ち取ったらしいよ"

"マジで!?"

"関東と中部地方のトップになった訳よ"

「…」

「羽久安…」

「…大丈夫」

改めて桐生組の強さを知り梓さんは裏の人間である事を身にしみて感じた。

関東でも知らない人はいないほど大きな戦力を持つ桐生組が中部地方をも潰してしまったいま桐生組は尚強極へとなった。

梓さん…大丈夫だったのかな…。
殺り合ったって事はそう言うことだよね?
怪我してないよね?不安だよ…。

「俺のクラスもその話で持ち切りだったけど…やっぱり恐ろしい組だよ」

「うん、本当にあの時説得して引き離して正解だったよ!羽久安が無事だもん」

「だな」

「…っ」

「それにその桐生梓って結構顔知られてて有名だからな?最近街で見かけるって話聞くは」

「ほんとに!?」

「ああ、何か…いつも違う女連れて歩いてるって言ってる奴がいた」

「…」

「うわっ最低だね」

その場に一度鉢合わせてしまった私にはその話だけで胸が張り裂けそうになる。

あれが本当の梓さんであることを認めなければいけない事実を突きつけられているような気がして…。

それでも…梓さんの悲しい顔が頭に浮かび上がってきてどうしても辛くてどうしようもなく梓さんに会いたくなる。

やっぱり私って可笑しいのかな?
梓さんを諦められなくと毎日毎日考え込んでしまうのが間違いなのかな…。

ガタっ…

「羽久安?」

「…私先に戻ってるね」

「え…全然食べてないけど大丈夫?」

「うん、食欲なくてさ」

「…そっか、わかったよ」

「2人はゆっくり食べててね」

「うん」

「ああ」

私はほとんど残った学食の食器を返品場に戻して学食場を去る。

教室に戻ろうと廊下を歩いているとふと強い視線をたくさん感じて伏せていた顔をあげると周りの生徒達から視線を浴びていた。

辺りを見渡すとそこは1年生と2年生の教室がある校舎側で私は考え込み過ぎて間違えて3年の教室とは真逆に歩いて来てしまっていた。

引き返そうと振り返りまた歩き出す。すると

「明智先輩!」

「…なに?」

「いや、あの、その」

「用がないなら呼ばないで」

「…す、すみません!」

話しかけてきた私とほとんど身長が変わらない彼の上履きを見ると緑で1年生だとわかる

私は彼の横を通り抜けて教室への廊下を歩き出す。今度から気を付けなくちゃな…

戻る途中に自販機があり私は緑茶を買おうと2年生の上履きを履いた奴らが群れてるを気にせず自販機の前に立ち小銭を入れようとして気付いた

「…売り切れてる」

緑茶が珍しく売り切れていてふと側にいた2年生がまだ空けていない緑茶を持っていてそれを見つめていると自分を見てると思ったのか顔を赤らめ始めた

「な、なんすか」

「…緑茶」

「え?あ…俺じゃねぇのかよ…」

「…え?」

「いや、なんでもないっすいりますか?」

「…いいの?」

「凄い飲みたそうですからいいっすよ」

「あ、お金」

「いいっす、明智先輩にあげれるならそれだけで嬉しいっすから」

「ありがとう」

私は後輩くんがいい人過ぎて微笑んで緑茶を受け取りルンルン気分になる。

「か…可愛い…」

「明智先輩の笑顔初めて見た」

「緑茶ありがとうね?」

「い、いえ///」

「きみ名前は?」

「は、林(はやし)っす」

「ふーん…たぶん覚えとく」

「嬉しいっす///」

「じゃ」

私は緑茶を抱きしめてその場を去り教室に戻る。案外いい奴もここにいるんだな。

今まであんまり男子とか見もしなかったし名前を聞くのなんて尚更だそれに後輩なんて。

ま、緑茶タダでくれたし良しとしよう。

放課後一人で帰っていると梓さんと出会った歩道に着き信号を待っていると

「先輩!」

「ん?」

「昼休みぶりっす」

「ぇーと…林くんだっけ」

「覚えてくれて嬉しいっす」

「ま、そんな時間経ってないしね」

「確かに、先輩この辺に住んでるんすか?」

「あ、まぁ」

「良かったらこれからスタバとか行きません」

「なんで?」

「え、いや、せっかく会えたんだし?」

「意味がわかんない」

「…先輩って本当冷たいっすね」

「だから?」

「先輩今まで男子の名前とか覚えたり話したりする人じゃないって聞いてたからもしかしたらチャンスかもって思ってたけど」

「馬鹿じゃないの」

「そうすっね…つまんねーの」

「…」

「待てよ」

「…離して」

しょうもない事を考えてるこいつに呆れて冷たくあしらってやるとさっきまでの人懐っこい顔をしていた後輩は眉間に皺を寄せて私の手を強く掴んできた。

ギリギリと段々手に強く力を入れてくるからさすがに痛くて顔が痛みで歪む。

いい子とか思ってたのが間違いだった。
人は見かけによらないってこう言うことなんだね…。

梓さんはこんなこと絶対にしない…。
こんな時にまで梓さんを考えてしまうなんて

「いや…っ離して!」

「あれ、いつも表情変えない冷静な先輩でも怯えたりするんすね」

「…っ」

こいつ私をなんだと思ってるんだよ。
私だって人間なんだから怖いに決まってるじゃん。

痛い腕を必死に振り払おうとするが男の力にさすがに叶うはずかない。

後輩くんは不気味な笑いをして私を歩道沿いの壁に押し付けて思いっきり背中を打ち傷みが背中に広がる。

私は本当に怖くて恐怖に暴れ出すと私の両腕を掴み壁に押し付けてきた。

「だっ、誰か…っ」

「助けなんて来ないよ」

「…いやっ」

「こここの時間帯一番人通らないから」

「…っ」

外はもう暗くなっていて家の明かりだけがこの人気のない道を照らしていた。

私の制服のネクタイを解きYシャツを外し始めるから再度暴れ出すが後輩くんはこれでもかという強さで壁に押し付けてくる痛みに体から力が抜ける。

私のスカートの中に手を入れ始めて足も暴れ出るが痛みで力が入らない…

怖くて目から涙が滴るのがわかる…
気が付いたら私は意識を手放していた。
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