銀メダルの 恋


「僕、五輪が終わったら引退しようと思ってるんだ。って、まだ五輪に出れるかもわからないんだけど、ね。」


彼は嘲るように微笑んだ。


「で、全部自分でしようと思ってる。振り付けとか、選曲とか。最後だし、ね。

ショートはクライスラーのLiebesleid、フリーをベートーヴェンのピアノソナタ8番、悲愴にしようと思ってて、知ってる?」


淡々と話しているようだったがわたしのこともきちんと気にかけてくれているようだった。


「ピアノはすこしだけ齧っていたので、なんとなく。でもLiebesleidは、」



「ああ、"愛の悲しみ"だよ。」



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